公務員を目指している方の中には、家庭裁判所調査官になることを考えている人もいるかと思います。
比較的女性が多く、ホワイトな職場とも言われます。
一方で、「家庭裁判所調査官は辛い」と言った意見もあります。
どちらが本当なんでしょうか?
結論としては、「家庭裁判所調査官は辛いけど、職場環境自体は悪くない」です。
確かに、家庭裁判所調査官は辛い仕事だと思います。
しかし、適性があり、やりがいを持って働ける人にとっては、働きやすい環境と考えられます。
家庭裁判所調査官に関するデータと共に、分析結果を紹介していきますので、家庭裁判所調査官になるかどうかじっくり考えていただければと思います。
家庭裁判所調査官の辛いポイント
家庭裁判所調査官が辛いといわれるポイントについて、4つ紹介します。
- 全国転勤がある
- 人とのコミュニケーションが必要
- 正当な評価がされづらい
- 競争率が高い
全国転勤がある
家庭裁判所調査官は、基本的に全国どこにでも配属になる可能性があります。
さらに、数年おきに転勤を命じられるケースが多々あります。
そのため、家族の生活環境が一定期間で変わってしまうことになります。
子供の教育の面でも影響が出る可能性が高く、配偶者の転勤対応も難しくなってきます。
単身赴任を選択すれば、別居家族となり、家庭生活の維持自体が課題となるでしょう。
一箇所にとどまって生活基盤を築きたい方には、家庭裁判所調査官は辛いかもしれません。
人とのコミュニケーションが必要
家庭裁判所調査官は、「家庭や非行の問題解決のプロフェッショナル」とされています。
裁判所の説明によると、「事件の背後にある人間関係や環境も考慮した解決が求められる」とあります。
家庭裁判所では、法律的な解決を図るだけでなく、事件の背後にある人間関係や環境を考慮した解決が求められます。家庭裁判所調査官は、例えば、離婚、面会交流等の当事者やその子どもと面接し、その意向や心情などについて調査を行ったり、非行を起こした少年やその保護者と面接し、非行に至った経緯や動機、少年の性格や行動傾向、生育歴、生活環境などについて調査を行ったりします。
引用元:https://www.courts.go.jp/saiyo/shigoto/index.html
当然、当事者の方々と直接コミュニケーションを取る機会が多くなります。
しかし、相手は心理的に不安定な状況にある人が多く、適切なコミュニケーション能力が無ければ、トラブルに発展する可能性もあります。
場合によっては、当事者からの暴力や嫌がらせを受ける可能性もあるでしょう。
そもそも、人とコミュニケーションをとることが苦手な方であれば、多大なストレスがかかることが予想されます。
コミュニケーション能力に不安がある方には、家庭裁判所調査官の仕事は辛いかもしれません。
正当な評価がされづらい
家庭裁判所調査官の業務は、調査の内容や過程が外部から見えづらく、なかなか適正な評価を受けづらい環境にあります。
法律に基づいて白黒つければいいというものではないので、何が正解か分かりづらいと言えます。
がんばったのに報われないとなると、モチベーションの維持が難しくなる可能性があります。
評価の過程が不透明なこともあり、上司との確執が生じるリスクもあるでしょう。
出世をしたい、認められたいという気持ちが強い方には、家庭裁判所調査官は辛いかもしれません。
競争率が高い
家庭裁判所調査官の競争率は、7~8倍程度と高い傾向があります。
毎年の採用人数が数十人程度ですので、狭き門となっています。
法律だけでなく、心理学や教育学の勉強も必要になってきます。
ですので、そもそも家庭裁判所調査官になるための勉強が辛いかもしれません。
家庭裁判所調査官の環境は悪くない
家庭裁判所調査官が「辛い」という話をしてきましたが、職場環境自体は悪くないようです。
関係者の証言やデータとともに見ていきます。
離職率は高くない
裁判所の方の、家庭裁判所調査官の離職率に関する発言がありました。
〇 家裁調査官の離職率は どの程度か 。
引用元:京都家庭裁判所委員会(第37回)議事概要(令和4年)
● 離職等については把握していないが 、感覚としては年4、50人採用さ
れ、若くして離職していくは年若干名である。
若干名を4,5人と考え、その人達が就職から3年以内にやめたとしても、3年以内の離職率は10%となります。
厚生労働省によると、令和2年3月卒業者の新規大学卒就職者の就職後3年以内の離職率は32.3%です。
世間一般の離職率よりも、家庭裁判所調査官の離職率の方が低いと推測できます。
家庭裁判所調査官は、働きやすい環境と考えてよさそうです。
残業が少なめ
ダイアモンドオンラインの記事によると、2019年の裁判所の月間残業時間は「9.15時間」だそうです。
下記表で紹介されている、国家公務員のランキングの中でも、一番残業時間が短いことが分かります。
引用元:ダイアモンドオンライン
月の残業時間の平均が9時間というのは、かなり少なめですね。
有給消化率が高め
裁判所職員は、有給消化率が高めというデータもあります。
令和4年度の有休消化率は82.9%という高い数字がでています。
引用元:https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/nenkyuR4.pdf
民間の有給消化率の平均が62.1%ですので、20ポイント以上多いことが分かります。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaikyou.pdf
また、裁判所の職員の年間の有休は20日ですが、民間は平均17.6日と、そもそも年間の有休の日数も違います。
基本的には、民間企業よりも有休が多く、しかも取得しやすいといえます。
休職率は高くない
2022年に家庭裁判所調査官で休職している人の割合は、0.25%と書かれています。
私の方でちょっと申し上げると、つまり、二〇一八年九十人、二〇一九年八十七人、二〇年百五人、二一年八十六人で、二〇二二年は百二十三人と。これが九十日以上の長期病休取得者数、そしてその割合と。
引用元:https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121015206X00720221117/311
割合としては、今年度、書記官さんで〇・五五%、家裁調査官で〇・二五%、事務官で〇・六九%と。これまでの経過に比べても増えていっているという、こういうことになっているわけですが、最高裁、これどういうふうに評価しているんですか。
公務員の2021年の常勤職員は269,101人に対して、休職者は1,931人ですので、公務員全体の休職率は、約0.72%です。
民間企業は、少し古いデータになりますが、財団法人 労務行政研究所が2008年にまとめた内容を参考にします。
メンタルヘルス不調のため、1ヶ月上欠勤、休職している社員の割合は0.49%だそうです。
引用元:https://www.rosei.or.jp/attach/labo/research/pdf/000008234.pdf
休職率をまとめると以下のようになります。
- 家庭裁判所調査官:0.25%
- 公務員全体:0.72%
- 民間企業:0.49%
一見するとメンタルをやられそうな家庭裁判所調査官ですが、休職している人の割合は少ないことが分かります。
仕事に対してやりがいを持っている、周りがきちんとサポートしているといった理由が考えられます。
まとめ:家庭裁判所調査官は辛いけど、職場環境自体は悪くない
「家庭裁判所調査官は辛いけど、職場環境自体は悪くない」という結論になりました。
一般的に、家庭裁判所調査官が辛いと言われているのは、以下のような理由があります。
- 全国転勤がある
- 人とのコミュニケーションが必要
- 正当な評価がされづらい
- 競争率が高い
特に、全国転勤が辛いという意見をよく見ました。
全国転勤をしてもいいかどうかが、家庭裁判所調査官を選ぶポイントにもなりそうです。
一方で、家庭裁判所調査官は下記のような理由で、働きやすい職場環境とも言えます。
- 離職率は高くない
- 残業が少なめ
- 有給消化率が高め
- 休職率は高くない
結局のところ、何を重視するかによって、家庭裁判所調査官になるべきかどうかが決まると思います。
今一度、自分が家庭裁判所調査官になって何をやりたいのか考えた上で、「辛い」と言われる内容を乗り越えられるかどうか考えてみるのがいいと思います。