就職や転職の情報を調べていると、「インフラ業界はやめとけ」といった情報を見かけます。
ただ、どういった方が、どういった理由で「インフラ業界はやめとけ」と言っているのかは不明です。
データに基づいた話ではなく、何となく言っているような感じも受けます。
私の方で、データに基づいて調べた結論としては、「インフラ業界はやめとけとは言えない」となりました。
インフラ業界は、給与が高く、離職率も低い傾向がありますので、ホワイト企業と考えてよさそうです。
もちろん、インフラ業界の中にもブラックな会社や部署はあるかもしれません。
しかしながら、安定した職業につきたい方には「インフラ業界」は向いていると考えますので、「インフラ業界はやめとけとは言えない」という結論になりました。
インフラ業界はホワイト企業の傾向が高い
インフラ業界は、比較的ホワイト企業が多い業界と言えます。
その理由としては次のようなことが挙げられます。
- 安定した業界
- 給与が高い
- 離職率が低い
- 若い人の離職率はもっと低い
詳細について、順に紹介します。
安定した業界
インフラ業界は公共性が高く、景気の影響を受けにくい安定した業界です。
電力、ガス、水道、鉄道、道路など、国民生活を支えるライフラインを担っています。
そのため、設備投資や人件費にも一定の予算が確保されやすく、経営基盤が揺るぎにくいのが特徴です。
電波法等の法律で守られているため、新規参入が難しい業界でもあります。
業績の変動が小さいため、従業員に対する待遇を維持しやすい環境にあります。
給与が高い
インフラ業界は、他の産業に比べて給与が高い傾向にあります。
厚生労働省が提供している「毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報」を元に、インフラ業界と全産業を比較すると、以下のようになります。
- 調査産業全体:329,778円
- 電気・ガス業:563,099円
- 情報通信業:507,096円
- ※情報通信業には「ソフトウェア開発」や「ネットショップ運営業」等も含むため、正確にはインフラ以外も含まれます
産業全体よりも、1.5~1.7倍くらいインフラ業の方が給与が良いことが分かります。
給与面から見ると、間違いなくホワイトな業界です。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r05/23cr/dl/pdf23cr.pdf
離職率が低い
インフラ業界全体の離職率は他業種と比べて低い水準にあります。
景気に左右されにくい安定した事業基盤があることや、比較的高い給与水準があることが影響しているためと考えられます。
厚生労働省の「産業別入職率・離職率」を示したのが、下記グラフです。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/kekka_gaiyo-02.pdf
産業全体とインフラ業界を比較してみると以下のとおりです。
- 産業全体の離職率:15.0%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:10.7%
- 情報通信業:11.9%
他にも、離職率が低い業界はありますが、インフラ業界は離職率が低いといっていいでしょう。
若い人の離職率はもっと低い
1つ上で、離職率について紹介しました。
ただし、この離職率には、定年退職でやめた方等も入っているので、一般的なイメージの離職率とは少し違うと思います。
ですので、29歳以下の若い世代の離職の割合について見ていきたいと思います。
離職者全体の中で、29歳以下の若い世代の離職者の割合をグラフにすると、以下のようになります。
雇用動向調査のデータをもとに作成しました。
上記のグラフから、産業全体とインフラ業界を比較してみると、以下のようになります。
- 産業全体:34.7%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:11.9%
- 情報通信業:31.9%
「電気・ガス・熱供給・水道業」において、若い人の離職が非常に少ないことが分かります。
一方、「情報通信業」は、比較的高めですが、インフラ業界以外の職種(「ソフトウェア開発」や「ネットショップ運営業」等)が入っていることも影響していると考えられます。
若い人の離職が少ないということは、働きやすい環境であると言えるのではないでしょうか。
インフラ業界が「やめとけ」と言われる業界ならば、こんなに若い人の離職率は低くないでしょう。
インフラ業界は野心家には向かない
安定志向の強いインフラ業界は、野心家や起業家志向の人には必ずしも向いている業界とは言えません。
個人の力で短期的に出世することは難しく、年功序列的な風土が色濃く残る企業も多いためです。
また、ベンチャー精神に事欠くなど、新しいことに挑戦しづらい環境もあります。
メーカーのように、ヒット商品を考えて、一気に業績を向上させるといったことも難しいですね。
このように、インフラ業界は安定重視の風土が強いため、野心家には向かない面があると言えるでしょう。
一方で、安定した給与と待遇を考えるのなら、インフラ業界は向いていると言えます。
インフラ業界は狭き門なのでそもそも就職できるかが問題
「インフラ業界はやめとけ」という前に、インフラ業界への就職自体が難しいという問題があります。
雇用動向調査のデータによると、2022年の入職者(就職、転職等)の数は、約8百万人だったそうです。
そのうち、インフラ業界である「電気・ガス・熱供給・水道業」と「情報通信業」は合計で22万5千人程度です。
割合でいうと、産業全体の3%程度しかインフラ業界に就職、転職できていないことになります。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/kekka_gaiyo-02.pdf
ある程度専門知識が必要なことを考えても、インフラ業界に入るのは難しいと考えてよさそうです。
ですので、「インフラ業界はやめとけ」と言う前に、そもそも「インフラ業界に入れる実力があるのか?」が問われるといえます。
インフラ業界に入れなかった人が、「インフラ業界はやめとけ」と言っているだけかもしれません。
まとめ:インフラ業界はやめとけと言えない
「インフラ業界はやめとけと言えない」という結論になりました。
厚生労働省が発表しているデータを元に考えると、下記のような理由から、インフラ業界はホワイトな業界と考えることができそうです。
- 安定した業界
- 給与が高い
- 離職率が低い
- 若い人の離職率はもっと低い
一方で、安定しているがゆえに、「自分の力で大成功したい」といった野心家の方には、物足りない業界ともいえます。
ですので、インフラ業界が「おすすめの方」も「やめといた方がいい方」も両方いると判断しました。
結論として、「インフラ業界はやめとけと言えない」となりました。